実録・日本共産党

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―その恐るべき素顔と歴史を探る―
思想新聞より

実録・日共産党

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政策編 2

有事法反対の欺まん
今なお北朝鮮擁護論


 有事関連三法が6月6日、参院本会議で9割を超える圧倒的多数の賛成で可決、成立しました。反対したのは共産党と社民党だけです。国民が圧倒的に賛成している有事法制になぜ、共産党は反対するのでしょうか。ここに共産党の本質を知る手がかりがあります。

国際・国内法ともに無視
有事法制は独立国であるなら、いずれの国も制定している国家の基本的な法制です。にもかかわらず、共産党はこうした法制を認めようとしません。このことは我が国を独立国と見ていないことを意味しています。これほど国民を侮辱した態度もないでしょう。
 それは現行綱領が我が国を「国土や軍事などの重要な部分をアメリカ帝国主義ににぎられた事実上の従属国」と位置付けて独立国家とみなしていないからです。自ら描き出した「米帝妄想」の中にひきこもっているから、そうした見方でしか日本という国を見ることができないのです。
共産党によると、有事関連三法は「米軍が引き起こす海外での先制攻撃の戦争に、自衛隊が公然たる武力行使をもって参加し、罰則つきで国民を強制動員する」ものとします。そして有事法の制定を「憲法九条を正面から踏み破る歴史的暴挙」といいます(志位和夫委員長)。
 この主張からも明らかなように共産党は「米軍=戦争勢力」論に立っています。これは米国を帝国主義国とする共産党の特殊なイデオロギー的見解にすぎません。国際社会では北朝鮮の核開発をはじめとする大量破壊兵器を問題にし、そこから国際社会を脅かす北朝鮮が取りざたされています。ところが、共産党にとっては米軍が戦争勢力であって、北朝鮮は戦争勢力ではない、つまり平和勢力ととらえているのですから驚きです。
 たとえば、共産党はつぎのように言います。
 「昨年9月に日朝間で結ばれた『日朝平壌宣言』は核やミサイルなど安全保障上の問題について『対話』で『解決を図る』と明記し『互いの安全を脅かす行動をとらないこと』を確認しています。北朝鮮の『脅威』を口実に有事法制をつくることは、こうした問題の平和的解決どころか、両国間の緊張をいっそう拡大し、軍事的な対抗措置の悪循環を生み出すことにつながります。平和に役立たないばかりか、逆にアジアと日本の平和を脅かすものです」(「赤旗」4月11日)
 あきれた北朝鮮擁護論です。核やミサイル問題は北朝鮮が日朝平壌宣言の後に自ら開発を認め、今年一月、核拡散防止条約(NPT条約)から脱退して、ひたすら核開発にあたっている「脅威」そのものの話です。日朝平壌宣言には「核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を順守する」と明記されています。これを平然と破ったのが北朝鮮です。何を根拠に共産党は北朝鮮の「脅威」がないと言い張るのでしょうか。
 今回、有事法制が整備されたのは何も北朝鮮の脅威にだけ対応しようというものではありません。自衛権を行使するにあたっての一般的な法整備であることは言うまでもありません。
 共産党は有事法の制定を憲法九条を踏み破るとしていますが、はたしてそうでしょうか。
 第一に、自衛権は国際法によって、すなわち国連憲章第51条に国家の「固有の権利」として認められたものです。第二に、憲法9条の「戦争放棄」は自衛権まで放棄しているわけではなく、自衛隊は合憲であるとの最高裁判決が確定しています(1954年、砂川判決など)。ですから国際的にも国内的にも自衛権は認められており、その自衛権を担う自衛隊の活動をスムーズに行わせる有事法もまた合憲であることは論を待ちません。 ですから有事法制定は9条を踏み破ってなどいないのです。
 共産党の有事法整備反対論は共産主義イデオロギーに基づくものです。すなわち米国を帝国主義国と決めつけて悪なる存在と規定し、その米国に追従する資本主義国の日本も悪であるとする偏見から導かれた、ウソ偽りの空論にすぎないのです。