実録・日本共産党

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―その恐るべき素顔と歴史を探る―
思想新聞より

実録・日共産党

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政策編 5

市町村合併に反対
党勢拡大不利の党略

 市町村合併がいま、話題になっていますが、共産党はこれに真っ向から反対しています。
 共産党によると、政府が市町村合併を進めているのは大型開発を効率的に進める体制を作り、住民サービスを合併の機会に切り下げるためだといいます(第22回大会決議)。その狙いは市町村合併で「自治体リストラ」を進め、中長期的には国の地方への財政支出の大幅な削減を計り、その一方で大型開発をより効率的に進めようとしている、だから反対だとしています。
 しかし、こうした主張には説得力がありません。効率化すなわちムダを省くのは行政でも民間でも当たり前で、それ自体が否定されるべき政策ではないからです。共産党は「自治体リストラ」を忌み嫌っていますが、はたしてそうした態度でいいのでしょうか。
 リストラ(リストラクチャリング)とは、企業が時代や革新の流れに適応して構造を変えていくことをいいます。事業部門の改編や経営組織の改革、それに人員削減などがそれで、単なる首切りではありません。全国の自治体も企業と同様にリストラが迫られていることは事実です。時代と革新の流れへの適応が求められているからです。
 では大型開発はどうでしょうか。これもこれ自体が悪いわけではありません。大型開発あるいはインフラ整備は地域社会では不可欠な面もあり、問題はムダなものをいかに省くかということに尽きます。地域住民にとって必要なものを効率的に整備するというなら反対する理由がありません。 「地方への財政支出の大幅な削減」を政府が中長期的に考えているのは確かです。
 なぜなら今日までの日本の国家システムは中央集権の「大きな政府」が基本で税金の六割が中央で、地方分は四割にすぎず、仕事はその逆に中央が四割で地方は六割もあったからです。
 これは中央が決めた事業に補助金を振り分け地方を指図する「ひも付き行政」「三割自治」(かつては三割)を行い、地方を中央のコントロール下に置いてきた結果、生じた現象です。ここから補助金獲得への首長の霞が関詣でが始まり「政官業の鉄の三角形」も登場しました。全国一律のインフラ作りを目指す貧しい時代はまだしも、今は時代が変化しました。
 そこで「地方でできることは地方で」(小泉首相)が必要になります。だが、地方に権限を移すにも現在の自治体規模はあまりにも小さく「細切れ」すぎるのです。今の市町村数は3200余。このうち大半は町村でその数は2542で、その6割が人口8千人未満です。しかもその面積も細切れです。
 現行の区割りは1956(昭和31)年に決められたものです。終戦直後の学制改革で市町村に中学の建設が義務付けられ、中学が一校まかなえる財政力と地理的範囲(約八千人)が自治体の最低規模とされ、市町村が形成されたのです。
 当時は自転車とバイク、鉄道、バスが主な交通手段で行動範囲は1時間5キロ圏。ところが、それ以降の自動車の急速な普及と道路網の整備で、現在は50~60キロ圏に広がっています。道路・交通・通信はもとより、パソコンの導入などで事務革命が急速に進み、その一方で多くの地方では過疎化に見舞われました。
 そういう中で市町村は福祉などの身近な生活行政を担い、仕事はますます増大しています。これら問題点を整理し地方自治の精神をより一層発揮しようとすれば、現状の細切れ区割りに甘んじているわけにはいきません。それこそリストラが不可欠なのです。

地域住民益を無視した暴論
 にもかかわらず共産党は市町村合併に反対します。それは共産党にとって市町村が多いほど共産党議員を作りやすいからです。共産党は市町村合併にも議員定数削減にも必ず反対します。また共産党は自治体労組を基盤にしており、共産党議員と共産党系労組の組み合わせで党勢拡大を図ってきたので「自治体リストラ」で劣勢になるのを恐れているのです。
 つまり市町村合併に反対するのは党利党略、共産党の勢力拡大のためにほかならず、「住民が主人公」のゆえでは決してないのです。