思想新聞より
実録・日共産党
67戦後編 55
「共同」で保守層狙う
新たな党勢拡大の柱に
「長野方式」の全国化をめざす
共産党はこの4月の統一地方選挙で新たな党勢拡大を画策しています。そのターゲットにしているのは何と保守層です。
90年代後半の共産党躍進ブームは政治不信層の受け皿となったからですが、共産党は受け皿として票がこぼれ落ちてくるのを待つのではなく、積極的にそれをかき集めようと考えています。しかも従来の無党派ではなく保守層に狙いを定めるきわめて「攻撃的な姿勢」なのが特徴です。
これを共産党は「共同」と呼んでいます。統一戦線方式を拡大したもので、選挙で保守層と「共同」できるところは共同し、そのプロセスで保守層を取り込もうというわけです。
その成功例が長野県なので「長野方式」とも呼びます。長野方式とは平成14(02)年9月、田中康夫知事の不信任案可決―失職の出直し選挙で田中知事が圧勝しましたが、その際、共産党は政党として唯一、田中氏を支持し成果を得たところからこう呼びます。
共産党は田中知事の「脱ダム」宣言を「巨大開発中心から、県民の福祉と暮らし中心へ」と位置づけ、巨大開発=自民党=腐敗の構図を描き、知事選を「旧来の利権政治への逆戻りを許さず、県政の民主的改革の前進」としてこれに便乗しようとしました。
その結果、同時に行われた県議補選では上田市で共産党候補が、前回の3倍近い3万7千票を獲得して当選するなど長野県議会で6議席となり、議案提案権や議会内交渉権を得ました。この大成果は「地元企業の社長、自民党員、キリスト教牧師など、陣営の経験したことのない広範な支持があり、勝利を得た」(赤旗同年9月2日)もので、保守層取り込みを勝因とみたのです。
保守層取り込みについて志位委員長は次のように述べています。
「保守層の人々も含めた、これまでにない広い層との共同の可能性が広がっている。この共同は大都市でも地方でも広がっている。議会の外だけではなくて、議会の中でも保守系議員との共同が広がっている」(全国地方議員代表者会議=02年8月29日、さいたま市大宮ソニックシティ)
保守層取り込みは長野だけではありません。志位委員長によると、徳島県では「吉野川可動堰(かどうぜき)反対の住民運動の広がりで民主県政が誕生した」、高知県では「県政の最大のがんであった、ゆがんだ同和行政の終結へ急速な転換がはかられた」といった成果をあげています。
地方議員代表者会議で徳島県の山田豊県議は「定数42の議会で共産党議員はわずか2議席。それでも、無党派の人たち、他党との共同を大きくすすめ、新しい県政をつくりだすことはできるというのがなによりの教訓だ」と述べ、保守層取り込みの重要性を強調しました。
長野、徳島、高知の成果を志位委員長は「自民党と『オール与党』による自治体の反動支配が21世紀には通用しなくなりつつあることを鮮明に示した」と評価し、「長野方式」の全国化を指示しています。
県レベルだけでなく市町村レベルでも「長野方式」が実を結びはじめています。たとえば和歌山市です。同市では昨年八月、公立大学設置計画をめぐって市長が辞職、それに伴う出直し市長選で自民党といっしょに新人候補を支持し、当選させました。共産党は「保守層や財界人のなかでも共産党の株はあがっている」と評価し、保守層取り込みの成功例としています。
統一地方選で成果をさぐる
和歌山市長選と同時に行われた市議補選(定数2)では共産党の候補が当選し、共産党市議団は7人に増加しました。保守との「共同」によって党勢が拡大したのです。このほか小沢一郎自由党党首の地盤である岩手県陸前高田市の市長選でも自民党と「共同」し市長をとりました。
4月の統一地方選挙はこうした「共同」の成果が注目されます。
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