実録・日本共産党

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―その恐るべき素顔と歴史を探る―
思想新聞より

実録・日共産党

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戦後編 54

党綱領改定が焦点に
不破議長の「理論活動」
レーニン主義の扱いが焦点に

 日本共産党の不破哲三議長は03(平成15)年2月14日、記者会見し次期衆院選に出馬せず国会議員を引退すると表明しました。
 すでに2年前に開かれた22回党大会で「国政は志位委員長が党を代表する」との方針を決めていましたので、国会議員引退は規定の路線といえます。しかし、不破氏は議長の役職はいままで通りで、党の最高権力者であることに変わりはありません。
 今後、不破議長は党務に専念するとしています。その党務の中心に置かれるのは「理論活動」で当面、綱領改定を最重要課題に取り組むとみられています。前回党大会では一部で綱領改定がなされるとの見方がありましたが、結局、なされませんでした。それは綱領を抜本的に改定するのか、それとも部分修正にとどめるのか、党内の見解がまとまっていなかったからです。
 現在、共産党は大きな壁にぶち当たっています。それは宮本顕治前議長が敷いた「綱領路線」を堅持し続けるのか、それとも思い切った路線転換をするのかという、路線問題にほかなりません。路線問題はまかり間違えば党分裂もあり得る大問題なのです。
 綱領路線は、レーニン主義に基礎を置いています。レーン主義は【1】共産党を職業的革命家からなる「戦闘的前衛党」と規定、【2】戦闘的唯物論によって宗教を抹殺、【3】共産革命の方法として暴力革命を唯一のものとして絶対化、【4】プロレタリアート独裁論・共産党の一党独裁論、の「四つの原則」から成り立っています。
 これを共産党は基本的に踏襲しているのです。今後もレーニン主義を維持するのかどうかが、不破議長の「理論活動」の焦点になるはずです。
 共産党は「前衛党」については前回の党大会で規約から「前衛」を削除しましたが、党の組織原則については「民主集中制」を堅持しており、「戦闘的前衛党」を完全に放棄したとはいえません。弁証法的唯物論も堅持しているので、宗教抹殺も不変と考えられます。
 暴力革命唯一論については、不破議長は2000年の年頭インタビューで、マルクスは古い国家機構を「粉砕」「爆破」する場合もあれば平和的・合法的な手段での国家機構のつくりかえが可能になる場合もあるとしているのにレーニンは前者のみを絶対化する誤りを犯したと述べたことがあります(同年一月四日付『赤旗』)。
 つまり不破議長は、マルクスは政権の暴力的移行もあれば平和的移行もあるとの“革命の多様
性”を指摘したのにレーニンは暴力的移行だけを唯一絶対化した、それが誤りだとしたのです。
 しかし、これは「綱領路線」を修正するものではありません。すでに宮本前議長が現綱領を樹立するときに「敵の出方論」を提示しています。敵の出方論は、平和革命必然論を批判し「革命が平和的か非平和的かは敵(反動勢力)の出方によって決まる」としたものです。平和革命必然論にも暴力革命唯一論にも組みせず、どちらもあり得るというのが綱領路線です。
 つまり暴力革命論そのものを否定したわけではなく、暴力革命の可能性は堅持しているのです。その意味でレーニン主義から離れたわけでは決してありません。  
 このように共産党は今なお「四つの原則」にしがみついています。不破議長の「理論活動」はこのタブーに踏み込むのかが注目されるわけです。

注目される構造改革論
 かつて不破議長は「構造改革論」に傾斜したときがあります。1958年のことですが、不破議長は「社会主義への民主主義的な道」との論文を書き、党から厳しく批判され、自己批判して撤回したという過去があります。構造改革論はイタリア共産党が主張したもので、国家を階級支配の道具とはとらえず、二つの階級の力の均衡・調停の場ととらえ、革命を経ずに民主主義的に社会主義政権が樹立できるとするものです。
 不破議長は構造改革論を再び持ち出すのか、今後の動静が注目されます。