思想新聞より
実録・日共産党
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エピローグ・上
「革命路線」は不変
欺瞞的な綱領改定案
共産党は11月に行われた第43回総選挙において惨敗しました。これを受けて党大会は来年1月に開催される予定です。そこで焦点となるのは共産党の憲法である「党綱領」の改定です。すでに共産党は6月に第7回中央委員会総会(七中総)を開催し、綱領改定案を発表しています。
字句表現を代えるだけ
なぜ今、改定するのかと言うと、七中総で不破哲三議長は「国民によりわかりやすい表現」にすると言います。つまり、路線を修正したり、過去を反省するために綱領を改定しようというのでは決してないのです。
本シリーズで紹介してきたように、共産党はコミンテルン日本支部(国際共産党日本支部)として創立されました。この
「生まれ」こそが共産党のDNA(遺伝子)を決定している最大の問題ですが、改定案は「日本共産党は、わが国の進歩と変革の伝統を受けつぎ、日本と世界の人民の解放闘争の高まりのなかで、1922年7月15日、科学的社会主義を理論的な基礎とする党として、創立された」とし、コミンテルンの手先であったことをまったく恥じていません。
次に共産党に突きつけれられている問題は、レーニン主義に決別するかどうかです。レーニンの革命論の継承が共産党の二段階革命論であり、これを放棄しない限り、共産党は昔のままの革命政党だからです。
ところが綱領改定案はこれを相変わらず堅持しています。すなわち改定案は「アメリカ帝国主義は、世界の平和と安全、諸国民の主権と独立にとって最大の脅威」「日本の独占資本主義と対米従属の体制を代表する勢力から、日本国民の利益を代表する勢力の手に権力を移す」と、米帝・日帝の「二つの敵論」に立ち、二段階革命論にしがみついているのです。
共産党は「レーニンの呪縛」から逃れることができないことを自ら証明しています。
よく共産党は天皇制を容認するらしい、といった会話を聞きますが、本当に天皇制を容認するのでしょうか。改定案は「党は、一人の個人あるいは一つの家族が『国民の統合』の象徴となるという現制度は、民主主義および人間の平等の原則と両立するものではなく、国民主権の原則の首尾一貫した展開のためには、民主共和制の政治体制の実現をはかるべきだとの立場に立つ」と強調し、天皇制否定の「民主共和制」(従来の「人民共和国」)の堅持を相変わらず表明しています。
そして「(憲法の)天皇条項については、『国政に関する権能を有しない』などの制限規定の完全実施を重視し、天皇の政治利用をはじめ、憲法の条項と精神からの逸脱を是正する」として、現憲法下で反天皇制の条件闘争をより一層展開することを明言しています。
これも何ら変わらないのです。
では、日米安保条約はどうでしょうか。現行綱領は「破棄、全アメリカ軍の撤退と軍事基地の一掃のためにたたかう」という表現でしたが、改定案は「破棄しアメリカ軍とその軍事基地を撤退させる。対等平等の立場にもとづく日米友好条約を結ぶ」としています。つまり「たたかう」との表現を消し「友好条約を結ぶ」という表現で柔軟さをよそおい、カモフラージュしただけであって日米安保破棄の中身はまったく変わっていません。
自衛隊解散も変化なし
自衛隊についてはどうでしょうか。これまでは「自衛隊の増強と核武装、海外派兵などの軍国主義の復活・強化に反対し、自衛隊の解散を要求する」としていたのを「安保破棄後のアジア情勢の新しい展開を踏まえつつ、国民の合意での憲法第九条の完全実施(自衛隊の解消)に向かう前進をはかる」としました。つまり反対や要求といった強い表現を避けただけにすぎず、ここでも変化はないのです。
改定案の内容を見れば共産党は綱領を改定するといっても表現を改定するだけであって革命路線を変えていないことがわかります。語句を替えて「厚化粧」しただけなのです。