実録・日本共産党

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―その恐るべき素顔と歴史を探る―
思想新聞より

実録・日共産党

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戦後編 51

「暫定政権構想」発表
国民欺く羊頭狗肉の策

 共産党は98(平成10)年夏の参院選挙で840万という史上最高の
得票数を得ると、同年9月下旬に第三回中央委員会総会(三中総)を開催しました。

当面と根本目標「二重の取組」
 総会は一部をマスコミに公開し「開かれた共産党」を演出しつつ、新たに「暫定政権構想」を打ち出したのが特徴です。
 この模様を新聞は次のように伝えています。
 「初公開された25日の討論の中で、司会者から『同志』と呼ばれて、発言した地方幹部は『党指導部の見解を聞き、政権が近づいていると感じた』と述べるなど、おおむね党の方針への賛同に包まれた」(読売新聞98年9月26日付)。
 三中総で志位書記局長は暫定政権における日米安保条約の扱いについて「我が党は、暫定政権では、安保への違いを野党は互いに押しつけないこと、つまり、党としては主張を留保すること、政権としては安保破棄の措置をとらないとの合意をすること、現状の条約と法律の中で対処し、現状より改悪することはしないこと、こういう態度で臨む」との方針を明らかにしました。
 また不破委員長は天皇制について「当面の我が党の行動綱領には君主制の廃止はない」と強調したのです。これを天皇制容認とマスコミは報じました。野党政権に加わる条件を整えておこうというのが狙いです。
 共産党はこうした方針を出す理由について次のように言います。
 ―共産党には「新しい質の政治的役割が求められている」。つまり【1】自民党政治の根本的転換を目指す役割、【2】当面の政局打開、現実政治を実際に前に動かす役割の「二重の役割」があるので、これに応じて「二重の取組」を行うのが現在の党活動の基本姿勢である。
 何とも分かりにくい説明ですが、要するに共産党には日本社会を根本的に転換させることと当面の役割に対する「二重の取組」が必要だというのです。つまり、当面は安保遵守=根本的には破棄、当面は天皇制容認=根本的には廃止という「二重の取組」を行うというわけです。容認と破棄という180度違う方針を同時に取り組むというのですから、まさに矛盾していますが、国民に対しては二枚舌、羊頭狗肉としか言えません。
 自民党を軸にした連立政権やオール与党の構図に異議を唱える無党派層を共産党が取り込むためには、本音を隠して国民向けの柔らかい顔を作らねばならない、それが「当面の取組」であり、暫定政権構想なのです。
 これまでの共産党の綱領路線というのは、第1段階として民主連合政府を樹立し(これを民主主義革命と称する)、その後に社会主義政権をつくる(これが社会主義革命)という二段階革命論です。この革命観の起源は古く、1920年に開催されたコミンテルン(国際共産党)第二回大会でレーニンが打ちだした「民族革命テーゼ」に由来します。もともと1917年のロシア革命も二月革命から十月革命に移行する二段階革命でした。
 これを日本に当てはめて咀嚼(そしゃく)しますと、日本はアメリカ帝国主義に半ば支配されているので、まず第1段階としてアメリカの支配を排除するため安保破棄などの「民主主義革命」を成し遂げる、そしてアメリカの支配から脱すれば第2段階として「社会主義革命」(これが十月革命に該当)を断行して共産党独裁政権を樹立する、その際、この革命がいかなる革命になるかは「敵の出方」によるというものです。これが綱領路線です。

革命への敷居を下げる構想
 これに新たに暫定政権構想を打ち出すのは「民主主義革命」の敷居が高いので、その前にさらにもう一つ低い段を設けようというものです。これなら国民は階段に乗ってくれ、さらに次の階段に進んでくれるのではないか、そう期待を込めた暫定政権構想というわけです。「怖い」イメージを払拭して、次ぎなる革命への展望を開こうという魂胆が見え見えです。
 まさに羊頭を掲げて狗肉を売ろうというわけだ。